目次
はじめに
2015年9月17日、Appleが最新のiOS「iOS 9」の配信を開始しました。
このiOS 9 の目玉機能の一つに「広告ブロック機能」があります。
2014年のDSP戦争によってバナー広告は非常に多くのベンダーから配信されるようになりました。
それを受け、トラッキングのタグなども数多く分散し、一つのサイトにアクセスするだけで30を超えるビーコンタグをロードするサイトも出てきました。
また、時代はスマホファーストになり、小さな画面でのブラウジングが当たり前になってきています。
その中で、バナー広告というものはユーザにとってフレンドリーとは言い難いという背景も存在しています。
やり過ぎの広告
先述の通り、バナー広告の数というものは増え、ユーザが見る画面は小さくなっています。
その中で、ユーザに広告を見せるべく広告運用者からしても鬱陶しい広告が存在しています。
- 全画面広告
- フロート広告
この2種類だけは本当に広告の印象を下げているものだと思います。
Google公式も全画面広告はダメだとアナウンスしています。
また、スマートフォンユーザが多くなり、PCに比べ回線速度が遅い環境での閲覧が多くなりました。
そうすると、多数のバナー広告やビーコンタグのロードは回線にもCPUにも負荷を掛けることになり、ユーザとって好ましいものでは到底ありません。
広告は多くのメディアの収入源である
では、なぜそのようなユーザフレンドリーではない広告が世の中に溢れているのか。
そこに目を向けていただきたいと思います。
それは、数多くのメディアのほとんどは広告収入によって運営されているからです。
広告ブロックにより、メディアの収入がなくなってしまえばメディア運営も立ちいかなくなります。
そうすると、メディアは閉鎖もしくは別の収入手段を立てるしかなくなるのです。
普段見ているコンテンツは無料ではありません。
広告収入によって、広告の掲載によって無料で利用できているだけなのです。
また純広告を販売するにあたっての指標となるPVですが、多くのサイトが測定に用いているであろうGoogle Analyticsもブロックされているという話も出てきました。
このことはでぶててさんのブログが詳しく検証されているので、そちらをご覧ください。
広告ブロックしているユーザは広告収入を生まないのか?
広告収入の多くはバナー広告のクリックや、広告をクリックした後の成約(コンバージョン)で発生します。
では、そもそも広告をブロックするようなユーザは広告をクリックもしないから、クリック報酬も、その後のコンバージョン報酬も発生しないから収入に影響がないのではないか?
という声も聞くようになりました。
その声は半分正しく、半分は誤りと私は考えています。
その理由は2つあります。
1.広告と気づく、気づかないに関わらずクリックしている経験がある
広告はうっとうしい。確かにその側面はあります。
しかし本当にそれだけでしょうか? 普段は広告を無視しているが、ふとした時に広告に目を惹かれることはないでしょうか。
- 自分が好きなブランドのセール情報
- 知らなかった興味のあるイベント情報
- 自分の欲しかった商品
そんな広告が出てきたらクリックしてサイトを訪れたりするのではないでしょうか。
2.表示による広告収入が存在している
広告収入の多くはクリックによる収入や、成果による収入です。
しかし、中には表示による収入の広告も存在します。
クリックや成果による報酬に比べ、収入額は小さくはなりますが、メディアの大切な資源の一つであることに変わりはありません。
広告ブロックはユーザの価値を生むか
ユーザの為になりづらい広告が存在していることは確かです。
そして、負荷が軽減し、速度が向上することでユーザ体験は間違いなく向上するでしょう。
そういう意味では間違いなく価値は生まれます。
しかし、すべての広告をブロックしてしまうことは良いユーザ体験に繋がらないとも考えています。
ユーザ体験を妨げる広告と、ユーザ体験を向上させる広告それぞれが存在するはずです。
それほどに最近の広告運用者はユーザのことを考え、ユーザに寄り添って広告を作っています。
そのようなユーザに価値をもたらす広告までカットしてしまっては、新たな情報がユーザまで届かなくなってしまいます。
さらに、メディアの収益が減ることから、メディアはバナー広告からネイティブ広告のような新たな収入手法を探さざるを得なくなります。
運営が難しくなり、閉鎖に追い込まれるサイトも多く存在するでしょう。
そして、何よりも既存のメディアではなく、新たなメディアが生まれにくくなるのが問題だと考えています。
既存のPVもあり、ブランディングもある程度確立しているメディアは、純広告やネイティブ広告のような広告を販売することで何とか存続できるでしょう。
しかし、新規メディアを立ち上げようとした際、そのような広告クライアントをつけることはほぼ不可能でしょう。
そうなった時、素晴らしいメディアを立ち上げる構想はあれど、実現が難しくなってしまう。
それは長期的に見るとユーザの価値を毀損するものではないでしょうか。
まとめ
個人的に、アドブロックは昔から見え隠れしている流れであり、「広告はうざい。」と考えられている以上は止めようのない流れの一つだと考えています。
しかし、今回のように非常に大きな力を持ったベンダーが広告のブロック機能を提供し、すべての広告が排除されるのは良いことだとは思いません。
ユーザ体験を阻害する広告は確かに存在します。
そのような広告は淘汰されるべきであり、ユーザに新たな気付きや発見、提案をもたらす広告は残るべきであると考えています。
現状、ロボットではその判別が難しいと思います。
このことを受け、過剰に広告を張っているメディアや、ユーザ体験を阻害している広告を提供しているベンダーがユーザのことを考え、広告の提供方法を改めていただけるのが最も良い形なのではないかと考えています。